Kuuta

蛇の穴のKuutaのレビュー・感想・評価

蛇の穴(1948年製作の映画)
3.9
精神病院で治療を受けながら、主人公のトラウマが解き明かされるニューロティックスリラー。オリヴィア・デ・ハヴィランドの熱演を含めてよく出来ているのだが、今作には症状の重い病棟に行く度に個性的な患者に出迎えられる、地獄巡り的な要素がくっついており、この描写が凄い。

部屋を徘徊し、突然踊り出す人、喋り倒す人、怒り出す人、泣き出す人の様子が画面の隅々にまで映っている。「蛇の穴」の意味がわかる場面、ギャスパーノエのクライマックスを思い出した。終盤の山場となるダンスパーティー、男性棟と女性棟の大量の患者がごった返し、最後にみんなが一体となって「家に帰りたい」思いを大合唱。鳥肌が。

本筋の方は、主人公の脳内モノローグと口にするセリフと相手に取る態度が壊滅的に噛み合っておらず、記憶も情報処理の順番もめちゃくちゃだが、治療によって次第に整理され、主人公の過去が分かってくる、という展開。自分の認識と客観情報が食い違った時、不安が爆発し、悪いイメージがどんどん膨らんでいく。

トラウマの原因がわかる=病気が治るという図式化された解決には肩透かし感もあるが、予想以上に強烈な体験が出来て大満足。これはカルト映画でしょう。
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