マヒロ

蛇の穴のマヒロのレビュー・感想・評価

蛇の穴(1948年製作の映画)
4.0
精神病を患い記憶障害を起こすヴァージニア(オリヴィア・デ・ハヴィランド)は、夫であるロバートの事すら忘れ去ってしまっていた。何故そこまで追い詰められるに至ったか、ロバートは彼女の主治医であるキックに語り始める……というお話。

作家志望の普通の女性だったはずのヴァージニアが発狂するに至った経緯を探る回想パートと、精神病院で過ごすヴァージニアが周囲の患者や意地悪な看護師長に悩まされる現代パートに別れて話が進行していく。
時代もあるのか精神病への理解や治療方法について違和感を覚える場面も少なくはないが、オリヴィア・デ・ハヴィランドによる迫真の演技も含めたかなり攻めた発狂描写の恐ろしさや、ヴァージニアの内面を掘り下げる内に真相が徐々に明らかになるという展開の面白さなど、サスペンス映画として非常に良くできていて楽しめた。
キック医師や夫のロバート、一部の入院患者などヴァージニアの味方となる人はわりと出てくるが、あくまで物語は彼女の一人称視点になっているので、彼らが完全に信用できる人たちなのかと言うところもハッキリとはわからないところもまた怖く、最後まで気の抜けない緊張感があった。

「蛇の穴」とは重度の精神病患者が送られる特殊な部屋のことだが、正気を失った人々がひしめき合い暴れたり喚き散らしたりする様はなかなかにショッキング。『ショック集団』を思い出したりしたが、あれよりも更に15年も前の作品だと考えると今作の攻めっぷりが窺える。

(2023.6)
マヒロ

マヒロ