KnightsofOdessa

蛇の穴のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

蛇の穴(1948年製作の映画)
4.5
["信頼できない語り手"と精神病] 90点

発狂した主人公が"信頼できない語り手"として発狂原因を探す特異なサスペンスで、一応ハリウッドで初めて精神病院を描いた作品らしい。主治医のキック先生が退院に反対する中、患者の増加と夫ロバートの申請があったから無理に退院面接を行うという展開はテンプレ。そして、退院面接に耐えかねた主人公ヴァージニアは再び発狂し、重症患者用の病棟へと移されていく。

終始不安定な目線、焦燥しきった表情などハヴィランドの演技力によって支えられている本作品は、それ以外にもリアル過ぎる精神病院の描写などリトヴァクがかなり攻めていることが窺える。発狂中の描写はかなり丁寧で、理解のない医師、虐める看護師、同房の患者たちなど「カッコーの巣の上で」なんかよりディープな"蛇の穴"の描き方は凄い。

ただ、主人公の発狂が"両親に顧みられず義父に結婚を迫られた"という男性不信と亡くなった父や義父に対する"罪の意識"に起因するものとしているが、個人的には決定打に欠ける気がしている。徐々に狂っていったにしては描写不足だし、突然狂ったにしては理由が弱い。まぁ、治ってよかったねという感じ。普通は理由がわかっても簡単には治らんよ。

ハヴィランドは「女相続人」でオスカーを貰った際、スピーチすら嘘泣きなんじゃないかと言われたらしい。妹のフォンテインとの仲は最悪で、アカデミー側がブッキングしないように調整していたとかなんだとか。そして、フォンテインもフォンテインで「断崖」でオスカーを獲った際、同じく「Hold Back the Dawn」でノミネートされていたハヴィランドからの祝福を完全無視したらしい。そんなに仲悪くなるもんなんかね。
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