ぽち

ジョン・レノン 音楽で世界を変えた男の真実のぽちのレビュー・感想・評価

3.8
今までにない見事な切り口で、ビートルズファンも納得の一本。

歴史的な事柄は今までの情報と変わりなく、普通のビートルズファンなら知っていることなのだが、当時の友人を中心にインタビューでまとめた内容は貴重であり、また資料としても価値のある物だろう。

特に、ポールが語るジョンについての事柄は多く世に出ているが、出会う以前の小学生時代などの同級生のインタビューは超貴重。

そして今作での良い点の一つに、監督の「この方向性で」などの意志がほとんど見えないこと。

というか、これは意図してやっていることなのだが、変に神格化したり、才能を前面に出したりしていないのが、資料としての価値を上げている。

それはインタビュー内容から読み取れることで、当時ジョンを嫌いだった人などのストレートな意見も、脚色せずにそのまま入れている所に監督の手腕が光る。

時系列で事実を追う一般の形ではなく、原題「LOOKING FOR LENNON」からも分かるように、ジョンの当時を知るリバプールの人のインタビューを軸とした切り口とした大胆な手法が成功の決め手だ。

ジョンのファンはもちろん、ビートルズファンはぜひ見てほしい一本。



余談。
いまさら言うまでも無いのだが、実際にその人に接したことのある友人などの証言というのは、その人を知るうえでとても大切な情報と言えるだろう。

勿論その人の感情や、思い込み、年月による記憶の改変等「事実」と反することもあるかもしれないが、為人を理解するのには絶対必要なファクターであることは間違いない。

「人は二度死ぬ」という言葉がある。
二度目の死は「覚えている人がいなくなる」であるが、これは違う見方をすると、自分が認識している自分と、他人が認識している自分という二つがあり、両方ともまさに「自分」であるのだ。

今作に登場した人たちは、言い換えれば、もう一人のジョンを記憶に持っている貴重な人々ではないだろうか。

そう考えると今作の価値は大きいと思える。
ぽち

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