シネマの流星

山女のシネマの流星のレビュー・感想・評価

山女(2022年製作の映画)
5.0
遠野物語の早池峰山が舞台の江戸時代。米を盗んだ父(永瀬正敏)の罪を被り村を出るが、飢饉をおさめる人柱となるため連れ戻される凛(山田杏奈)

人は力を合わせて強くなれるのに、村の呪縛に弱さを露呈する。民は村の掟に縛られ、村八分を恐れている。現代はSNSで世界が繋がり、他者からどう見られるかを恐れ、自分を押し殺してでも共感を求める。その点で、今は「世界が村化」した世の中であると言える。

現代の眼から見れば忌み嫌う過去の風習も、福永壮志監督は肯定も否定もしない。人間に対して尊厳の眼差しを持って見つめる。

これが映画監督の仕事。他の監督が撮ると退屈になるが、世界でも稀有な演出力を持った監督。

あとはタイトルの工夫と、楢山節考のようなお色気があればパーフェクト。性生活は文化を伝えるのに欠かせない。
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