遠野物語を読んでからの鑑賞。
人伝に語り継がれてきた伝説がリアルに生々しく描かれていた。
日本では古くから、科学ではなくシャーマンを通じた自然崇拝が主であった。
天災や飢饉も神の思し召しで左右されると信じ、雨乞いを超えた生贄のような儀礼が行われてきたという。
本作ではとある農村の凶作による飢饉から、人柱という選択肢を取らざるを得なくなった村人の切実な心中も伝わってきて、如何にそうした風習が生まれたのかを想像することができた。
残酷な最期に向かう様子を村人と同様に祈りながら見守る中で、目に見えぬ神が下した応えに胸を打たれた。
稲妻の語源やしめ飾りにもあるように、雷や雨があっての豊作であり、天の恵みの農家の努力の結晶であろう。
稲は食すだけでなく、衣住の様々な生活に欠かせないものであり、今よりもずっと身近なものであった様子も丁寧に表現されていた。
世界中で異常気象や飢餓が広がる中で、稲が実ることと、それを食べられることは実に尊いことだなとあらためて感じた。
鑑賞後に定食屋で、いつもよりじっくりといただきますの合掌をした。