KnightsofOdessa

aftersun/アフターサンのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
3.5
[あの日、同じ太陽の下にいた父さんへ] 70点

シャーロット・ウェルズ初長編作品。30歳になったソフィーは、20年前に父親カルムと行ったトルコでの休暇について思い返す。といっても、格安リゾートで客はほとんどイギリス人、日中は海やプールやゲームセンターでダラダラと過ごして、退屈なディナーショーを見て寝るだけという日々である。このとき両親は既に離婚していたため、父親と過ごす長期休暇は久々に二人が長い時間を過ごす機会となったため、父親が知るソフィーの情報が若干古いなど絶妙に近すぎず、かといって肉親でもあるので絶妙に遠すぎずという微妙な距離感がある。ソフィーは父親のビデオカメラを通して、"父親"としてしか知らない彼の内面まで観察しようとする。"あなたが11歳だった頃、何をしていた?"といったソフィーによる質問、或いはソフィーが眠ったと思って一人ベランダに出てタバコを吸ったり、ペルシャ絨毯に憧れて購入を検討したりといった姿を通して、カルムの不安を探っていく。それは"過去を思い返す"という枠組みから外れていて、ソフィーが結婚して子供が出来たことが示唆されていることから、現在の自分と過去の父親を重ね合わせて想像している部分もあるのかもしれない。

ソフィーは父親の変化に敏感に気が付く反面、自分の微妙な年齢についても自覚的だ。自分よりも年齢が低い子供たちはソフィーにとって子供なので近付かず。逆に年上の子供たちには憧れを持ち、背伸びしている。例え彼らがソフィーのことを子供扱いし、同年代の好きな人とセックスすることしか頭になくても、ソフィーは彼らの観察を止めない。そうしたある種の青春研究によって、ソフィーの不安も探り出していく。何気ない、それでいて忘れ難い瞬間を見事に切り取った一作。
KnightsofOdessa

KnightsofOdessa