カツセマサヒコ

aftersun/アフターサンのカツセマサヒコのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
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試写で見たので点数つけられないんですけど普通に見に行ってたら4.7つけてた!つまりみんなに観にいくと良いよ!と胸張って言える作品だった!

うだるような暑さのリゾートホテルで解放的な時間を過ごす父(離婚してるからあんまり合えない)と娘。

その光景は常に穏やかであたたかく、多幸感に溢れているはずなのに、それが「過去の回想」だと僕らは知っているからいまひとつ明るい気持ちで見られない。

何気ない親子のやりとりに愛を感じ、そして愛を感じるたび、どこかで「この幸福に終わりが来る」ことを考えてしまう。その不安定な気持ちを、最小限の情報のまま、最初から最後まで描き続けるのが今作。

どうしてこの親子は一緒に暮らせないのか、カラムはどんな暮らしをしているのか、ソフィはなぜこの旅行を回想し始めたのか、カラムの葛藤はどこからくるのか、ほとんどが明かされないまま迎えるエンディングに「スッキリしない」と感じる人もいるかもしれない。でも僕は、他人の心情や人生のすべてを理解することはできない、という人間の根本的な性質そのものを描いているようで、この曝け出さないスタンスがやけに心地良かった。

子を持ってから「あ、この瞬間がずっと続けばいい」と思うことが増えた。平和で、穏やかで、賑やかで、愉快だ。でも「ずっと続けばいい」と願うということは「ずっとは続かない」と知っているからだ。その気持ちを克明に描いてくれた作品だと思った。


公式コメントは以下のようにしました。
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何気ない親子のやりとりに愛を感じて頬を緩めるたび、どこかで「この幸福に終わりが来る」ことを考えてしまう。その不穏な緊張を最小限の情報のみ伝えつつ最後まで描ききる勇気に、感服していました

カツセマサヒコ(小説家)

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