ジュンベッチ

aftersun/アフターサンのジュンベッチのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.1
のどかな気持ちで父娘を眺めてたら、時折サスペンス?ホラー?と錯覚してしまうほどの恐さがそこかしこに散りばめられ、何か起こりそうな緊張感でヒリヒリと。

ブラーのテンダーはちっとも優しくないし、クイーン&ボウイのアンダープレッシャーでは心潰されそうな悪夢のダンス、加えて娘によるREMのルージンマイレリジョンは押し寄せる不協和音の洪水で胃がキリキリ痛む。ちょっと不穏が過ぎるぞ!!(だが斬新)

かと思いきや、またなんてことない旅日記に戻る。みたいな不思議な映画だけど、娘の記憶の中の幸せやら不安やらをごちゃごちゃのままオープンしたらこうなるのかな。なんだかんだでグイグイ引き込まれてしまいました。

そういえば昔、私が反抗期バリバリ(死語ご容赦)だった頃、今は亡き父に強烈な暴言を浴びせたことがあった。ここで言えないほどの暴言を、賑やかな飲食店の中で。今でも後悔して落ち込むほどの暴言に対して父はスルー。叱られたり殴られたりもせず、特に何も言われなかったと思うが記憶は定かではない。幸運にも父には聴こえなかったのか、あえてスルーしてくれたのか、あるいはショックで何も言えなかったのか。しかし酷いことを言ってしまった傷は確かに自分には残っていて、今もごめんごめんと謝っている。この記憶と今でも続く気持ちを映像にしたら、やっぱり不安で不穏で混乱した悪夢になるかもしれない。

そんなこんなで。本作鑑賞後は誰でもセンチメンタルな気分にさせられるんじゃないかな。年を取ってればなおさら。実に切ない。

そして最後のカットは素晴らしいの一言です。拍手!