こじT

aftersun/アフターサンのこじTのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
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●アフターサン

記憶に残る青、青、青、黒。
20年前の夏の数日間が記録されたビデオテープに残る、父と娘の記憶を辿るヒューマンドラマ。
全てをともかく映像で見せる、という気概が感じられる作品で、娘ソフィの記憶に残っているであろう鮮烈な"青"が印象的。
逆に父親カラムの方は暗く、うっすらとした色彩。
この対比がこの映画における対照的な美しさであり、残酷さであり、劇中ほとんど語られないカラムが抱える心の問題をゆっくりと描き出している。
思い出はいつでも綺麗で、時間が経てば経つほど輪郭を曖昧にしていき、いつの間にか楽しかったものだけが残る。
おそらく父親同様31歳になったであろうソフィも、カラム同様様々な困難に直面しているのだろう。
きっと何度も見返しているのだろう、辛いことがある度に再生しているのだろう。
でもそれが『美しかった思い出に縋る』ということだとしたら悲しいよね、と感じる。
その色彩感もさることながら、構図が抜群。
カラムという人間の不安定さが見えますね。
どれだけカラムに感情移入できるか、というのがこの映画のキモな気もするので、作品の難易度は高め。
結末も含めてすべてが曖昧で、それを『想像の余地』と考えるか否か。
空気感、余白、個人的には刺さる映画でした。
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