アル華

aftersun/アフターサンのアル華のレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.0
【ビデオに詰まった幸せの時間】
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。
映画.com https://eiga.com/amp/movie/98881/

◆3連スコア
楽しい ★★☆☆☆
怖い  ★★☆☆☆
泣ける ★★★☆☆

◆軽く総評〜
美しくも儚い。夢物語のようで最後まで虜にされました。

映像良き。演技好き。テーマかなり好き👏
父娘の青春をただ見せてるだけだけど、そこに垣間見える愛とか成長、心の病を綺麗な映像と切り分けて魅せてくれる程良い夏の海辺系映画でした👏

目に映る美しい景色の裏では、どうしようも”出来ない”現実が加速している。
この作品のトーンは、目を見張るものがあり、ショーン・ベイカー監督作『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(2017)のようで、近年コンスタンスに続く夏の海辺系作品の終着点のようにも思えました。

初演技となる娘役フランキー・コリオは、11歳の初々しさと、何処か現実を冷静に捉えた大人の姿でとても魅力的!
空港での別れシーンなんかは演技には到底思えない…😯

何とも言い表せないラストには言葉も出ません。。

◆芸術作品のような、過去の記憶
今期待の新人監督’シャーロット・ウェルズが実体験を基に描く、父と過ごした夏のひと時の想い出の裏側で描かれる鬱のお話です。

正直、本作で描かれるこの部分の描写については、現在近しい病を抱える身として強く共感します。
自身の体験ですが時折、脳裏に浮かぶ想い出の映像にふけり、その映像が消えると同時に感情の不安定な部分が現れたりします。

これは本作の描写でも同様で、青緑に美しいリゾートの風景に突如カットインされる点滅する不安定な感情の描写。
各地域の映画賞で4ノミネート、1つの受賞にもたらした撮影グレゴリー・オクの、見事な切り替えは頭から離れません!

終始最低限まで静かな音響も、我らがQueenの『Under Pressure』の歌詞
”この世界の意味を知ることは恐ろしく、プレッシャーは僕らに容赦しない”
が強烈に作品、そして鑑賞者の私にも訴えかけてきました。

考えさせられはしますが「こうしたら良かった」というメッセージ性は一切無く、ただビデオテープに残された想い出を鑑賞者と共に追体験するだけのようにも感じますし、それでも信じられない程の気持ちが込められた監督魂の一作のように思いました。

是非もう一度は、鑑賞したい作品ですね😊

◆トリビア
↪︎『ムーンライト』のバリー・ジェンキンスがプロデューサーに名乗りを上げた。
参考 : https://s.cinemacafe.net/article/2023/02/16/83548.html

↪︎ 父役ポール・メスカルと娘役フランキー・コリオは撮影2週間前から、リゾートホテルで休暇を共に過ごした。
参考 : https://m.imdb.com/title/tt19770238/trivia/?ref_=tt_trv_trv
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