人は大切な瞬間を残したくてカメラを回す。カメラの中には大切な時間が刻まれ、いつでも再生してはその時の時間に戻ることができる。しかし逆説的に言えば、カメラで何かを撮るということは撮らないこと撮れないことが生まれるということだ。24時間365日、すべての瞬間を残すことはできない。それ以上に目に見えているものがすべてではない。そこには必ず余白が不可分として生まれてくる。その余白に我々は思いをめぐらせて、愛おしくなったり悲しくなったり、後悔をしたりする。映像は撮られた瞬間から過去となり、参照する現在からの逆照射を受ける。そこに巡らせる思いは常に過ぎ去ってしまった時間への目線なのだ。だけどその過ぎ去ってしまった時間に目を向けるために私たちは映像に残してしまう。それを何年後、何十年後も見返してしまう。
