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aftersun/アフターサンのyのネタバレレビュー・内容・結末

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

「11歳の時、どんな31歳を想像してた?」
ソフィの大人への憧れとカラムの大人になってもなりたい自分になんか到底なれていない絶望。

青と黄色のコントラストが美しい映画だった。ソフィの大人に近づいていく成長が「光=黄色」だとするなら、カラムが抱えている苦悩・死への欲動は「闇=青」だったように思う。黄色のリストバンドや夜の空/海が象徴する様に。それを思うと潜水が得意なカラムと泳ぎが苦手なソフィの対比も切ない。

カラオケ大会の後、1人で夜の海(深く這い上がることの出来ない底無しの絶望)に入水していくカラムは、きっと死の欲動に突き動かされて母なる海へと帰って行こうと(子宮回帰)していたのだと思う。ソフィが部屋に戻った時、カラムが裸でベッドに横たわっていたのはそのせい。
翌日、ソフィや周囲の人々に誕生日を祝ってもらっても浮かない表情をしていたのだって、既に彼はこの世界に生まれ生きることに一切の希望を感じていないから。

憶測になるけれど、カラムはきっとゲイだった。この映画において重要な意味を持つ Queenとボウイの共作「Under Pressure」のその歌詞は、まさにカラムが世界に対して感じていた疎外感と抑圧を表わしていた。フレディとボウイのセクシュアリティ、中盤に挟まるゲイカップルのキスシーンと大人になったソフィのパートナーが同性である要素はここに繋がってくると思ってる。(後日監督がカラムのクィア要素を否定していることを知った、けど私はこう解釈した)

カラムが抱えていたこれほどの絶望。
それよりも更に深い底なしの愛が、幼いソフィが構えるカメラの前の彼を良き父親であろうとさせ、あの輝かしい一夏の思い出を作り上げたんだと思うと…
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