たかはし

aftersun/アフターサンのたかはしのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.3
"映像"ってやはり凄くて、視覚聴覚の情報だけでなくて、時にその場の空気感みたいなものも含めて残してしまう力がある。思うに、その時の感情や文脈、画面の外のモノなど、映像を見た時に"映像に映らなかった物事"を思い起こそうとするので、逆説的に映像は映像外の物事を伝えられる、ような気がする。さらに面白いのは、映像を観たときの感情や情景、加えて映像の時点と今現在との間にあるコンテキストがその映像の上にミルフィーユのように積み重ねられていくということ。こうして映像は段々と"エモく"なっていくのかな、と思う。

点滅する部屋に見える父親はあの夏の姿のままだ。あの後ふたりが会うことはなかったのだと示唆される。序盤から数度差し込まれるシーンだが、そのことに気付いたのはUnder Pressureが流れる最後の挿入のタイミングだった。それはズルい…泣いた。

娘役の女優フランキーコリオは『レオン』のナタリーポートマンを彷彿とさせる(というかそれよりも良い(し、かわいい))名演。主演ポールメスカルの醸し出す極めて内面的な、滲み出るような憂鬱も素晴らしかった。
カメラワークであったり、敢えてレンズのフレアや低画質を活かす撮影も良い。

ともかく、"映像の暴力"を映画が語っているというシュールな構造が良い。「映画っていいよね!」改めてそう感じられる秀逸な作品。
たかはし

たかはし