KOUSAKA

aftersun/アフターサンのKOUSAKAのネタバレレビュー・内容・結末

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

自分も子供(ウチは息子ですが)を持つ父親として、最初から胸が痛くて😣基本ずっと泣きそうになりながら見てました。

奥さんと離婚して、最愛の娘とたまにしか会えないという状態に心がキリキリ痛んで、その時点でもう辛いですし、しかも少しずつ娘も成長して思春期になってるから、父親である自分との距離も出来始めるし、男親として娘の扱いが難しくなる時期でもあります。

ただ、そういうテーマを扱った映画は過去にもたくさんあったと思うんですが、本作が傑出しているのは、安易なお涙頂戴的演出ではなく、ぱっと見は何気なく思えるエピソードや会話を丁寧に紡いでいくことで、まるで微細なガラス細工を取り扱うかのような繊細さで、カラムとソフィーが心の中に秘めた言外の思いが、見ているこちら側に伝わってくるところだと思います。

前半、ツインの部屋を予約したのに、クイーンサイズのベッドが一つの部屋と間違えられていた時点で、もうすでに何か上手くいかない予感がプンプン漂っていたり・・😣

胸のキリキリ状態が最初の限界を迎えたのは、ソフィーが1人でR.E.Mの「Losing My Religion」をカラオケで歌うシーン🥺

カラム側にも恐らく心身の理由があったのかもしれませんが、娘が大好きな曲で「お父さんと一緒に歌いたい」とリクエストしてくれたのに、一緒に歌ってあげられなかったことに対する究極の気まずい空気感があまりに絶望的すぎて、本当に辛いシーンでした。「Losing My Religion」の有名なアウトロが、あれほど切なく空しく響くとは・・。

11歳の娘から前日にファーストキスをした話をされても、大らかな心で受け止めてくれたり、童心に返ったように一緒にじゃれあったりと、娘思いの優しい父親であることが痛いほど伝わるだけに、ソフィーとの微妙なすれ違いが生まれるシーンが来るたびに、心が打ち砕かれました。

クイーン&デヴィット・ボウイの「Under Pressure」も、これまでいろんな映画に使われてきたと思いますが、この曲の歌詞がこれほど映画作品内でエモーショナルに響いたのは初めてかもしれません。これこそ、カラムが胸の内に秘めていた悲痛な思いそのもので、

「プレッシャーが僕を押しつぶそうとしてくるんだ」
「もう一度だけ試してみないか?」
「愛を分け与え合うことが どうしてできないって言うんだ?」
「これが僕らの最後のダンスだ」

・・・と強く激しく歌われるたびに、心が抉られるような気持ちになりました。

カラムがラストシーンで向かった先は、正に「最後のダンス」であり、それは「自死」を表しているんだと思いますが、その道を選ばざるを得なかった父親カラムの気持ちに対して、決して「共感」は出来なくても「理解」しようとし始めた31歳になった娘ソフィーの思いが、深い余韻となって今でも自分の中にずっと残り続けています。
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