ぼっちザうぉっちゃー

aftersun/アフターサンのぼっちザうぉっちゃーのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.3
なかなか沁みた。現在進行形で沁み続けている。
存在しないはずの記憶とそれに伴う感情が勝手に喚起されて胸がどうしようもなく苦しくなった。

そして確信した。A24作品というのは、だれしも感じ得る、だれもが感じたことのある、そんな普遍と経験に訴えかけて、普段特別カテゴライズしていなかったり引き出しのそんなに上の方には置いてなかったりする感情を、改めて表層に浮かび上がらせて実感、体感させるのがとんでもなく上手いんだ。

まさに今作のノスタルジックみたいなものはその筆頭で、父親という存在の親密さと遠さといった絶妙な肌感が成す安心や不安その狭間の感覚を、他者理解の命題に接続させて途方もなく小さくて大きな切なさを生んでいる。
11歳の娘と31歳の父親。全く個人的な話だけれどちょうどその中間にあたるタイミングで観られたことにとても大きな意味を感じて、映画としての構造以上に両者の間に立ち、ストロボの中で父と娘双方の姿を探し彷徨っているような気分になった。

そしてまたパンフレットが良かった。薄くて内容もシンプルだけれど、形も大きさもバラバラな写真がそのまま綴じられたコラージュのような構成の表紙と巻末がすごく良い。


良作のなかでも、観終わってから時間が経つほどに自分の中で存在が大きくなってくる作品というのがあるのだけれど、この作品はまたそれとも微妙に違う感じを胸に焼き付けた。
それは何度もまた観たく、いや思い出したくなっているような、想えば想うほどに余情溢れて焦がれるような、そんな気持ちだ。
そしてそれはきっと日に焼けた後の感じと似ている。