あぶりかんぱち

aftersun/アフターサンのあぶりかんぱちのネタバレレビュー・内容・結末

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

時系列行ったり来たり、基本娘のソフィ視点だけど父親のカラム視点にもちょくちょく代わる、何でもないシーンを特徴的なアングルで見せる、そしてそのシーンが特に本筋に関わってるわけではない、と…

最近見た中では内容も含めて「エブエブ」の対極にあるような映画でしたが、ゆったりと流れるトルコの景色でひとつ癒されたのでまあ良し。で、終わって映画館出てから色々考えながら話を整理してみて。

端的に言うと「生きること」そして「死ぬこと」、その2つの対比を描いた映画なんだろうな〜と思うに至りました。

娘のソフィが「眠る」「パラシュートに憧れる」「夜にお洒落をする」「同年代の男の子とキスを交わす」など、これからの未来を想起させる『生』の側面、父親のカラムが「煙草を吸う」「ディナーで食い逃げする」「デュエットを断る」「誕生日の歌に対しての複雑な表情」など、この先が無い『死』の側面を担ってるんだろうと。
決定打は壁を一枚挟んで「LOVE」といった文字が並ぶ雑誌を手に取るソフィと、ギプスのようなものを苦悶の表情で外そうとするカラムのカット。

…正直カラムの方はこじつけ感がありますが、あの明るいトルコの中でカラムが抱えている「暗く重い何か」は確実に映画の中に織り込まれているわけで。

娘に対して分煙を心がけたり、護身術を真剣に教えたり、太極拳を真似させてみたり、「何でも話していい」と言っていたのに何故娘を残してカラムは死を選んでしまったんだろう…(ここの想像しろが大きすぎるせいで真相は分からない←この辺りの思い切った引き算が一種のアートっぽい)。

旅の最後に見せた父親の戯けたようなダンスの一幕を思い起こし、「あの時手を取っていれば」と後悔したりもしてるのかな。

360°カメラを使ったような映像の繋ぎで
あの頃の映像→それを画面越しに見る大人になったソフィ→あの頃の映像を撮った後のカラムを見せ、『2人が時間を超えて繋がった瞬間』を表現するという発想は凄いし、扉を開けて出ていくカラムの後ろ姿は本当に舞台を降りていくような物悲しさがあって…おそらく一生忘れないラストだなぁと思います。この1分見るために足運んだと思っても良いくらいの贅沢な余韻。レイトショーで見れば良かったな〜
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