たかのめ

aftersun/アフターサンのたかのめのネタバレレビュー・内容・結末

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます


※私的でめちゃ長い感想



長旅の途中で何故かちょっとした喧嘩が勃発するところとか、
移動中の乗り物の中で 外の景色を眺めながらわくわくする感じ、自分が旅行した時の感情が喚起されてどきどきした

あの波の音、ぐだぐだ寝っ転がってだべってる時間、最高の日のあとにはなんとなく疲れてぐったりしちゃう感じ、
帰りたくないね、ここに住めればいいのにね、と旅の終わりに思うこと
全部追体験みたいで すごく旅行したくなった


逆に、カラムのあの感じも身に覚えがあったので 心がざわざわした…マジで……
自分は今そこそこ元気だから耐えられたけど、いまメンタルの状態があんまり…な人は、観るの気をつけた方がいいなこれ…と思うなどした

ふとした瞬間に体が重くなったり、急に全部どうでも良くなったり、涙が溢れてきたり
夜の海に消えたい、溶けてなくなりたい、消え去りたい、と思ったり
シーツに包まれてみても眠れなかったり、怪我してたり…
それでもソフィのために帰ってきて、喋りかけて、笑ってみたりするところ

カラム…頑張ってたんだな………って心がキリキリした 今もしてる


多分日本語字幕には訳されてなかったんだけど、
How to meditation (瞑想の方法) とか THAI CHI (タイ "気") って本が部屋に積んであって、
心の平穏を取り戻したい・保ちたい、そういう気持ちがあったのかもしれない

「友人とお店をやるつもりなんだ」って言ってたし、「ドラックでも彼氏でも、なんでもパパに話せよ」って言ってたので
死なないで生きるつもりはあったのかな、と思った
でも駄目だったのかな、死に抗えなかったのかな

病気の可能性(余命を知ってたとか)も捨てきれないけど、全体の雰囲気的に 自殺かな……て感じはした

子どもの頃、誕生日を祝ってもらえなかったこととか
護身術を真剣に教えるのは、ソフィに危ない目に遭ってほしくないからなのか、それとも自分が危ない目に遭ったことがあるのか…?とか
カラムはもしかしてゲイ(orバイ、パン)なのかな…?とか、
何となくカラムの抱えるものがちらちらと見える気がするけど、予想していたより 与えられた情報が少なかった

だから見てる側は、カラムに何があったか分からない
それがソフィとリンクしているようで哀しかった
多分、ある日突然「お父さんが亡くなった」と知らせを受けたのかな、なんて思って
なんで、どうしてなにもいってくれなかったの、て思ったのかもしれない

逆に、ソフィが大人になるまでの過程は全く描かれない
大人になったソフィには女性のパートナーがいて、子どももいることがわかるけど

これはお父さんが見ることのなかった未来なんだな、って 観終わった後に気付いて
ダブルで情緒がしんだ

(余談だけど、ソフィの
何となく好きっぽい異性とキスしてみるけど、
そのあと同性同士のキスシーンを見て 同性同士でも恋愛してもいいんだ…!て気付いたり、年上のきれいなお姉さんにどきっとしたり
ソフィがレズビアン(か、バイかパンセク?)であることを自覚していったであろう描写
が「分かる〜〜〜」すぎて笑った 分かるよ…)


映画の中でずっとサブリミナル効果みたいにはさまってたクラブ(だと思ってたけど、レイブというらしい) のカットが、やっと長めに流れた時
"Under pressure" で泣くという、人生で初めての体験をした…すごい……


"いま、いっしょにおどろうよ
今踊らせてよ

そしたらあなたに手が届くのに
あなたの苦しみに気付いてあげられたのかもしれないのに

1人で泣いていたのであろうあなたを抱きしめられるのに
抱きしめたいのに

今の私なら、と思うけど
そこにいるのは あの日あなたと笑いながら踊っていた幼い私で

時間は戻らないし、あの時の記憶は美しく苦いまま残っているし、あなたはもういない"


こんな風に、ソフィの気持ちを勝手に想像して
ボロッボロに泣いてしまった

友人、恋人、家族、そういう大切な人と踊るとき、「これがラストダンスかも」なんて思わないけど
いつだってそれが "最後" になる可能性があることを 忘れたくないと思った


空港でソフィを見送って、彼女の故郷に送り出した後、
光が点滅する喧騒の中に消えていくカット

あれがもう最後だったのだと
そう思ってしまって


まじで映画の中の演出が全部良すぎる〜〜〜………!!!!!!!!て感動した

予告編で想像してたより、しばらく引きずるタイプの映画だった これは
台風のなか早朝から観に行ったけど、今月いっぱいは少なくとも引きずりまくる

というか旅行する度に脳裏をよぎりそう


この映画の記憶と生きていくしかないのか…
たかのめ

たかのめ