Jun潤

aftersun/アフターサンのJun潤のレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
3.5
2023.06.11

予告を見て気になった作品。
時を超えた父と娘の絆?な感じで、ノスタルジックというかジュブナイルというか、もう大好きな香りしかしません。

離れて暮らす父と、少女・ソフィが一緒に過ごす夏の間のバカンス。
ハンディカムで撮影した少女だった頃を追想し、あの頃の父と同じ歳になったソフィの心情と、当時の父の感情が繋がっていく。

鑑賞前の予想としては、少女時代と現代半々ずつくらいかなと思っていましたし、始まってすぐのハンディの映像も、後半にとても意味のある場面に仕上げに来るんだろうなと思っていたので、多様肩透かしを喰らってしまったのが正直な話。
ストーリーとしても、過去と現在のオーバーラップというよりは、意味深な現代の場面を挟んではいても、シンプルに父と娘が一緒に過ごす一夏の出来事を淡々と映し出していた感じです。

ここからはそんな緩やかなストーリーから感じたことになりますが、大人と子供の対比描写が光って見えましたね。
大人は子供よりも子供で、子供は大人よりも大人、そんな風に感じました。
それが子供が背伸びしている感じや大人の姿から垣間見える感じというよりも、シンプルな描写でストレートに描いていたような印象です。

早いものであと数年で僕が生まれた時の父の歳になってしまうわけで、これまで迷惑をかけたり面倒を見てもらったりしたことを考えると、あの頃の父に追いつけているのかと思うと全くそんなことはなく、同じような父親になれる自信も経済力もなく、そもそも結婚する気配すらなく……。
そう思うとなんて偉大なんだと思いますし、世の中にいる子供の数だけ父親がいて、違いはあれど“親”という存在になったという事実は、改めてすごいことなんだと感じました。
しかし今作を観ると、自分の父含めた全ての親が完璧ではなく、むしろ完璧な父親などどこにもおらず、あの頃の自分の考えが到底及ばないような悩みや苦労があって、親であることを求められても親らしくいられない、親である以前に一人の人間でいようとする様があったんだろうなと、想像に胸を膨らませられる余韻にあふれた作品でした。

作品上の役割は薄かったものの、おそらく演者自身が撮影したであろうハンディの映像を使用することでバカンスの現実感だけでなく、思い出のノスタルジックさがよく滲み出ていたと思います。
Jun潤

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