あんじょーら

aftersun/アフターサンのあんじょーらのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.1
シャーロット・ウェルズ監督   ハピネット A24   吉祥寺アップリンク


映画好きの友人、そして様々な人が絶賛、いや大絶賛している作品なので、予告編も見ないで行きました。かなり解釈の開かれた、それでいて芳醇な101分。初監督作品とは驚きです。最近の初監督作品の水準が高すぎませんか?というくらい凄いです。


何度も、恐らくはビデオテープの巻き戻し、それもビデオカメラのような今では見かけなくなったテープのビデオを巻き戻し、再生を繰り返す機械音が鳴る中で、様々な場面がザッピングしたりデジタル上で混ざったりしています。今から20年くらい前でしょうか?そんな感じの中、ビデオは11歳の少女ソフィ(フランキー・コリオ)が空港と思われるところで手を振っています・・・というのが冒頭です。


この作品は、11歳の少女ソフィと、その父カラム(ポール・メスカル)がヴァカンスにトルコに行った際のビデオ撮影と、ソフィの想像、空想で成り立っている映画、と解釈しました。


実際のビデオに収まっているのは、恐らく事実。それ以外の場面は空想、妄想の可能性がある、と言えると思います。


まず日常の場面の切り取り方がとにかく上手いです。光の加減、その空気感まで、非常にリアル、そして何処か、確かに、懐かしさ、ノスタルジーを感じさせるのです。

もちろん、恐らくは1990年代後半?辺りの世界を描いているので、小物や美術がそうなのだと思いますが、ノスタルジックに感じられるのだと思います。

その1990年代くらいのトルコのリゾート地での、ソフィと、そしてソフィの母とは離婚したカラムの数日間を描いています。


多分、初見ではワカラナイ仕掛けがいろいろと張り巡らされているでしょう、そしてどちらかと言えば、何度も鑑賞させる、という事ももちろん視座の中にあると思いますが、多分、いや個人的には、この映画が何だったのか?を思い出しながら思索する事を目指している作品なのでは?と感じました。その方がこの作品の、思い出す、という構造に合っていると思います。


なので、ある種の信用できない語り手、であるソフィの、それも自身も当時の父と似た境遇になった事で思い当たる、もしかして、という部分について思いを巡らせているのではないか?と感じました。


これは、父カラムをどのような状態であるのか?を考えないと、なかなか解釈が開かれ過ぎている、と取る人いらっしゃるのかも知れません。そして私も、観終わった最初はそう感じました。しかし、あれ?とかこれ?とか思い巡らせていると、何となく、こういう事なのかな?という部分が出てきた気がします。


これは解釈が様々に存在して良い作品。そう言う意味で大変面白い、誰かとまた話したくなる作品であるのは間違いないです。それもかなり緻密に積み上げられ、組み込まれ、あれ、この順番で!という驚きがあります。

あなたの11歳の頃ともう1度巡り合えるかもしれない作品。


私が11歳の時は、本当に何も思い出が無いです、特に普通の日常を過ごしていたのでしょう。本当に記憶が無い・・・


すべての11歳を過ごしたことがる、31歳以上の人に、出来れば娘さんのいるお父さんには是非のオススメです。


凄く、思い出す、行為そのものを描いた傑作。


ネタバレ感想、というか私の妄想は、コメント欄にて。