子供の頃は親って、もっといえば大人って、絶対的で完璧な存在なんだと思っていた。
だが実際に大人になってみると、子供のような未熟さを全然残したまま時間の流れという成り行きのまま親になっちゃっていることが実感とともにわかってくる。
この映画が描こうとしていることは大人になったからわかるあの時の父の苦しみであり、それでいてあの頃等身大に感じていたお父さんとの思い出でもある。
その感触はとても微妙で淡いものだかが、それがそのまま褪色したビデオテープのぼんやりとした映像として焼きつく。
正直、後半まで良いムードではあるが今ひとつ胸に迫るもののない映画だと思っていたけれど、最後の方で一気に胸にきた。
あの時父が感じていた漠然とした不安は、あくまで子供の自分が見ていたお父さんの姿の中からしか感じ取れないようになっていて、はっきりとした答えを与えてくれるわけではない。でもだからこそ、等身大の痛みとして伝わってくるものは確かにあった。
とても淡く褪色した、でも良い映画だった
