TakayukiMonji

aftersun/アフターサンのTakayukiMonjiのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.0
周りの評判も高かったこちらを鑑賞。

想像していたよりも余白の多い自由な作風。
かなり観る側の映画偏差値みたいなのを試されるようなA24が選びそうな作品。(今回は、自分の偏差値の低さに失望笑。)
というのが最初の正直な感想だったけど、映画友達グループLINEでのディスカッションと、解説動画とかを色々と観て、自分なりの解釈と感想がまとまってきた感じ。

これらを踏まえて予告編を観ると、だいぶ沁みる。これはもう一回観に行った方がいいかもな。すごく丁寧に作られているし、構成や演出も素晴らしいと思う。


以下、ネタバレで、まとまりのない感想を。




死んだ人の考えた思いは決して分かり得ることはない。年を経た時の自分の現実とビデオテープに残された事実と自分の中の過去はこうだっだろうという記憶と回想が混じり合った構成。これを正しく理解してみると、細部までの感じ方が大きく変わると思う。そらくらい丁寧に考えられて作られているなぁと解説動画を見ながら納得した。

真実はビデオテープにしかないけれど、それを見ながら、記憶と回想によって組み立てられた物語であり、そこに父と同じ年齢になった自分の今の気持ちが重ね合わされている。父がどれだけ苦しんでいたか、理解できる年齢になった、ということ。

真実はほとんど語られないが、父と娘の旅行でのやり取りを通して、ところどころで精神的な苦悩のサインや厳しい生活のサインが混じり合っていき、ノスタルジックな情景と思いが交錯していく。
ラストのレイブのシーンへの扉が持つ意味、解釈は様々だけど、ポジティブな言葉を振り絞りながら娘と別れる。あの空港を最後にして、、、という切なくも苦しいラスト。
メインビジュアルに書いてあるコメントを読むと、なるほどと繋がる。

自分の父親が死んで14年経つけれど、あの時、父は何を考えていたのか。もう既に、自分は大人だったから、全然同じ境遇ではないものの、死んだ人にしかわからないことがありすぎる。死ぬ直前は何をしていたのか。

11歳という大人になろうとしている中で、突然の心の喪失と対峙。20年間の積み重なったからこそわかるようになるという物語で、とても深みのある作品だったと思う。
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