あなたのやさしさを何に例えよう

aftersun/アフターサンのあなたのやさしさを何に例えようのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
5.0
2度目の鑑賞

小学生の頃の長期海外旅行
終わりが近づくにつれて感じたあの寂しさを思い出す

娘にかける言葉。一言一言、どんな言葉をかけるべきかを考えながら話すのだろう。親というのは。

年上のティーンたち。大人っぽさと刺激に憧れる。
わたしが大学生のとき、小さい子どもがわたしたちを見て、憧れのような気持ちを抱かれる存在だっただろうか? とか考えてしまった。

ソフィからのサプライズで、みんなに誕生日の歌を歌ってもらったシーン。そのすぐ後に差し込まれる号泣している後ろ姿。この苦悩。

◎「世界のことを知るのは恐ろしい」
ダンスする父とソフィに重なる歌詞この歌詞。
父親の、人間の、多面性を知ること。
ダンスシーンはすさまじい。『アンダー・プレッシャー』が盛り上がるにつれて胸が詰まる、胸が締め付けられる。
曲と、父親と娘の姿とが迫ってくる。
そして未来の夢?ダンスフロアのシーン。
思い返せば、ディスコのシーンは前半からずっと会って、この映画の軸になっている。(その意味ではこの映画は一本、彼女の夢の話だとも言える)

ラストシーンで、空港(ソフィのほう)と未来のソフィの自室と空港(父がいるほう)が連なる。(赤ちゃんの泣き声も乗ってるし)
行かないで…
観ているわたしは、心のなかでそう叫ぶ。
ソフィは、あの夏はこれが最後なんて思いもしなかったんだって。
父親が開けた奥の扉にはディスコの光が広がっている? その場所と繋がっているのか・・・?

初めて観たときは緊張していた。父親に儚さが漂っているから。
急に父親がいなくなるんじゃないかとか、事故に遭ってしまうんじゃないかとか心配で。

あれは一体なんだったんだろうって、ずっと考えられるシーンがいくつもある。
暗いフラッシュのディスコ?のシーンや、絨毯のシーン。
いくら考えてもわかることができない、父親の心の深淵。それが、彼をこの世から消したのであって。

ソフィ、歯の隙間が大きく開いててかわいい

◎休暇はいつだって、完璧なものにはならないものだな

◎父親は、この旅のときには何かを決めていたのだろうか・・・。死んでしまおうとか、消えてしまおうとか、これがソフィとの最後の夏だとか。
わからないけど、わたしはそうではないと思ってる。
”11歳のとき”
”アンダー・プレッシャー”。この世界で。

どれだけ父の実像に迫ろうとしても解りきれないという複雑な想い

23.12.11
早稲田松竹