みりんご

aftersun/アフターサンのみりんごのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
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この映画を観て思い出したエピソードがある。

"父親(父的立場、父性)の弱った姿"に焦点を当てる。

わたしの場合まだ父の弱った(弱気な?弱い立場のような?)姿を見たことがないので、祖父の話をする。

祖父はいつも堂々としていて、声が大きくて、一見老害に見えるけど立派で正しくて、絶対的に強い存在だった。

わたしが小学生(中学生だったかな)だった時のある休日1人で電車で祖父祖母の家に遊びに行って、電車で帰った日のこと。
わたしをグリーン車に乗せてくれようとした祖父は、券売機の使い方がよく分からなかったのか券売機では買えなかったのか、駅員さん呼び出しボタンを押した。
出てきた駅員さんは少し高圧的な態度の人で、なんとなくイライラしているのが伝わってきた。
祖父はいつも堂々としていたし、家族の集まりで誰かに下手に出ることなんてなかったし、対外的な祖父を見たことが無かったから、喧嘩になるんじゃないかとハラハラした。
その心配は杞憂で、実際の祖父はその駅員さんに対してかなり腰が低く、駅員さんの物言いがキツくても最後までぺこぺこしてグリーン券を買ってくれた。

祖父が亡くなる直前体調を崩して病床につくまで、祖父が小さく見えたのはそれが最初で最後だったわけだが、子どもながらに謎のショックを受け、グリーン車の中で泣いた。(祖母が握ってくれた🍙を食べてた)

もちろん駅員さんに対しての態度として祖父は何も間違っていなかったし、弱った姿として捉えたのも変だとは思う。変というか、ガキの感受性。
でも子どもながらに、父性に対する絶対的な信頼感が崩れた体験だった。
(自分が強いと思っていた人が頭を下げている姿ってクるよね。)

そんな体験を思い出した映画でした。
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