見終わって呆然。時間が経てばたつほど、喰らっていくボディーブロー映画。
父は離婚した妻の元にいる娘を誘い、夏のバカンスを楽しむ。映像は手持ちのハンディカメラで撮ったものがベースになっている。一見、父と娘のたわいもないひとときが映し出されているだけのようにみえる。しかし、合間合間に父の不穏な様子があらわれる。ただのホームムービーではない、という予感だけを漂わせながら、物語は進んでいく。「もしかして、、」「きっと、、」「たぶん、、、」。観客の頭のなかには次々と不安な問いが浮かんでくるが、それに答えてくれるような描写はほとんどないままラストをむかえる。だからこそ見終わったあとの余韻が尋常ではないのだ。
ポイントは、ホームビデオの映像と、大人になった娘の記憶が入り混じっているということだ。娘はホームビデオを見返して、あのひとときを振り返る。父はあのときどんな思いだったのか、本当はこうだったのではないか、と。娘の後悔の念と、それでも持ちたい希望とが入り交じり、あの夏のひとときのフィルムになっている。若き女性監督による従来になかった切り口と構成で作り上げた意欲作。
