mao

aftersun/アフターサンのmaoのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.5
"11歳の時どんな大人になると思ってた?"

説明を極端に省きながら余白の中に登場人物の背景を感じさせる、こんなにも観客に自分の物語にさせる作品凄い。映像と音楽で魅せる日常の描き方が上手いし、娘への愛と人生の哀しさが何層にもなって影を落とすポール・メスカルの演技も素晴らしい。娘を演じたフランキー・コリオの天真爛漫な無邪気さも凄く良かったし、雰囲気やルックスの完成度。私はちょっと平野ノラに似てると思った笑

11歳の娘ソフィと31歳の父親カラム。娘が父と同じ歳になった時何を思うか、当時の二人をビデオカメラの映像を通して今の自分と重ねる。
子供が生まれた瞬間に完璧な親になれるわけではないし、今までの自分と親という立場を切り替えるのは簡単では無い。カラムの心情として、具体的な何かは観客側には分からないのだけど常にある不安や彼の脆さが観ていて痛々しい。同時に完璧な親や人間なんていないという事も感じさせていて、ソフィからしたら凄く良い父親なのも虚しくなるというか何というか。エモいとかでは片付けられない哀しさや死を常に感じるのです。それを直接的な画ではなく消してあるテレビの画面、背中、壁や鏡なんかで表現している画面構成の上手さよ。画としても話としてもピントの調整の機微が最高にハマる作品でした。

父と娘が話しながらチェキの輪郭が浮かび上がるシーン、時の流れと旅の終わりを感じさせて好きだったな。
そしてダンスシーンにUnder Pressure、この歌ってこんな歌詞だったんだ。この歌詞と映画がバチッと決まるラスト、何回でも観たい。ここで一本の映画としての完成度がMAXになるレベルの感動がありました。

ストーリーとしては、父と娘の話というより、私にとっては人生の話で。観る人の数だけ解釈と余韻があると思う、そんな作品でした。2回目は最初から泣けてきてしまって、映画館で観た人もレンタルする人も是非2回目も観てみてほしい。終始哀しさを感じるし、悪く言えば観客に丸投げしている所が多いので、嫌いな人は嫌いかもしれないなと思いつつ色んな人の目にとまってほしい作品です。もっと劇場公開範囲広ければ映画館で観たかった…ブルーレイ買おうかな。
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