ベンジャミンサムナー

aftersun/アフターサンのベンジャミンサムナーのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.5
 「30歳の自分に驚くよ。40歳なんて想像できない」
 
 自分は今カラムと同じ歳であり、ソフィと似たような経験をしてるから2つの視点で刺さった。

 大人になった主人公が子供時代を回想する構成は『スタンド・バイ・ミー』に似てるけど、あの時の父親と同じ年齢になって、子供の頃には気付けなかった父親の視点を補完しながら進行していくのが重層的でトリッキー。
 なので「あの頃は良かった…」と単にノスタルジーに浸るわけではなく、父親の苦しみの追体験になるわけで、それでも父親の心のより深いところに触れようとする行いでもあり…
 と、哀しみと愛おしさが綯い交ぜになったなんとも言えない感情にさせられる。

 カラムが一人になって塞ぎ込んでる時は暗い画面になることでその時の心情を表したり(壁一枚隔ててギプスを剥がす場面が分かりやすい)、ソフィが「心のカメラに収めるよ」と言う場面では何も映ってないテレビのモニターに二人の姿が反射してたりと、ドキュメンタリータッチのようできっちり計算された画面構成になっている。

 行間を読む事が求められる作品であり、それ自体は良いのだが、そのバランスが悩ましいところ。
 「Under Pressure」が流れて大人になったソフィとカラムが抱き合う場面とラストでカラムが入って行く空間が、明滅するダンスホール(?)だけど、ここはもうちょっと初見でも″思い出の中″だと分かる描写でも良かったんじゃないかとも思う。

 地元の映画館で上映されなかったから仕方なくU-NEXTで観たけど、2回観るのが推奨される内容なので、結果的にそっちの方がすぐに見返せたから良かった。