このレビューはネタバレを含みます
記録と記憶の映画。
娘と父が過ごしたおそらくは最後の休暇。
そこに描かれるのは数日間あった休暇の中でビデオカメラに残った記録と主人公の娘の記憶に残っている場面。
母子家庭だった自分の子供としての気持ちは娘の心境として感じるものがあるし、子供ができてまさに今10歳の娘がいる身として子供に何を残せるのだろうか、どういう存在であれるのだろうかという葛藤も、自分の内面にあるものとして、本当に近くに感じた。
美しい映像の背後に、最初から最後までずっと通底してある暗さや影が、あの父の抱えている闇であって、おそらく31歳というあの時の父と同じ歳に娘がなった時には、父はもうこの世にはいないのだろうという事がなんとなく感じ取れる。
が、そういう中で、父が娘に向かって話す言葉。
「自分のなりたい人間になればいい」と話すホテルのベッドでのシーンとか、海の上に浮かんで「この先酒を飲んだりドラッグをしたりする事があったら、とにかくなんでも話してくれ」というシーンとか、自分の記憶と間違えそうになるくらい染みてくる。
自分にもふとそういう何気ない瞬間だったはずなのに、何十年も後に妙に心に残っている場面が呼び起こされる。
そういう映画。
最高。