Kei

aftersun/アフターサンのKeiのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
5.0
トルコにバカンスに出掛けた父親と娘の一夏の物語。
他の方のレビューにも書いてあったように、本作は父親と娘の気持ちや父親の過去、娘の将来が明確に描かれていたわけではなく余白の多い作品だった。
しかしその語らなさが解釈の自由度を持たせ、面白い映画になっていると思う。
大人にならなければ分からない父親の苦悩に、大人になってからソフィは初めて気づく。
カラムがソフィを見つめる目はいつもどこか寂しげで辛そうだった。
そうした目をするのはもちろん、旅が終わってしまったら前妻のもとで暮らすソフィに会えなくなることを寂しく思うからでもあるが、ゲイであることの苦悩や金銭的問題を抱えていたこともその理由だと考えられる。
カラムの言葉の通りありのままで生きることを貫いたソフィは、女性のパートナーと子供を持った今、何を思っているのだろうか。
これからのソフィの人生はきっと簡単には進まないけれど、この世を去ったカラムのことを思い出して、これまで通り自分らしく生き続けていくのだと思う。
映像のあり得ないほどの美しさは、まるでこの一夏の経験が二度と訪れないことを暗示しているようだった。
他の方のレビューを読めば読むほど「こんな解釈があったのか」と思う。
また少し時間が経ってから再鑑賞すれば新しい発見があると思うので、いつかまた観ようと思う。
自分にとって大事にしておきたい作品だった。
愛では人を救うことが出来ないこともある。
逃れられないpressureの中で生きるカラムにはこの世を去る以外どうしようもなかったのかもしれない。
ソフィがカラムの心の中を知っていたとしても知っていなかったとしても、ソフィはカラムを愛することしか出来なかったし、やるせないけれどそれで十分なのだと思う。

Turned away from it all like a blind man
Sat on a fence but it don't work
Keep coming up with love but it's so slashed and torn
Why, why, why?
Love...
Kei

Kei