みずきち

aftersun/アフターサンのみずきちのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.0
横浜のシーサイドシネマで視聴。
ほのかに不穏な雰囲気がずっと漂う。観ている間はずっと「これはこのメタファーじゃないか」「このあとこんな展開になってしまうのではないか」などいろいろ邪推してしまうのだが、驚くほど何も起きない。
それなのに、「なんだかものすごい映画を観たのではないか」という気になり、数日経ってもふとした時に映画のワンシーンが脳裏にちらついてしまうようなすごい映画。
なんの変哲もなさそうな描写に、重層的な意味が込められてるんだろうなと感じさせる、大人っぽくて奥行きのある作品。

若すぎる父・カラムが背中でめちゃくちゃに泣く一瞬のシーン。カラムと年の近い自分は、この描写の言語化しにくい刃で心をグサグサと刺された。普通にしてても31歳なんてまだまだ未熟で、自分1人のことすらままならない年齢である。それがもうずいぶん大人びた子を持ち、金銭的にも課題を持ち、語られないが他にも多くの悩みがあるだろう状態で、子供の頃に思っていたような順調な人生ではないカラム。そこに娘のあまりにピュアなハッピーバースデーサプライズは、泣きたくなるだろうな。

大人になったソフィはこのビデオを、なんの悩みもない幸せ100%な状態では観ていないことだろう。当たり前と思っている人や環境は永遠には続かないし、人生は思い通りにはいかない。大切な人との一瞬一瞬を、大事に過ごさなくては。そう思えた。

【いろんな人の考察を読んでの追記】
父親目線で2回目を観なくてはならない。涙
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