荻昌弘の映画評論

彼と人魚の荻昌弘の映画評論のネタバレレビュー・内容・結末

彼と人魚(1948年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 五十男が人魚をつり上げて、彼女(?)と恋をするというお話。秀抜すぎる位の着想だし、シナリオを書いたのが洒落っ気ではヒケをとらないナナリイ・ジョンスンだし、本国の評判は大したものだったしするので、大いに期待したが、残念ながら完全に裏切られた
 一番がっかりしたのは、こういう話に必須のファンタスティクな想像力の広がりが全然ないこと。いやに理クツっぽい。キザに悪口をいえば、作品が五十男を笑うより、観客が作品の「頭の固さ」を笑った方が早いくらいである。さすがにジャンスンだからところどころ利いた風なセリフなどないことはないが、それも普通のコメデイ風なデフォルマシオン(現実変改)を出ないし、又それを、アアヴィング・ピシェルなどという鈍骨がヨタヨタ演出するのではかなわないのである。ポウェルも、さびれて、案外によくなく、ただ人魚のアン・ブライスだけが、噂にたがわず、ミステリアスな官能美をただよわす。
『新映画 7(12)』