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葬送のカーネーションのボーのレビュー・感想・評価

葬送のカーネーション(2022年製作の映画)
4.5
 引き裂かれたアイデンティティと最期に残った尊厳、そして家族の絆さえ埋められない断絶の話だった。
 難民として避難するということを平坦に切々と描く作品。決死の祈りさえ、分かるけど決まりだからねえ…で脇へのけられる。難民1世の彼らにとって、故郷の土に埋められたい/埋めてやりたいというのは、人生における生きるために払った犠牲全部をかけた"尊厳"としか表現しようのない想いなのだ、と肌で思い知る1時間半だった。ここに難民1世と3世は超えられない壁がある。二人は互いに家族として身を寄せ合っていたが、どうしても真に分かり合えはしなかったと思う。それを変に悲劇的に描かず、ただただ在ることとして描く様が生々しくも誠実。これは道中助けてくれた人々ともそうで、帰還を求める祖父の孤独を考えるとげにやるせない。
 あと映画館で観るべき映画でもある。引き摺られた棺が地面を掻く音、言葉少なに歩く遺された家族、二人と遺体の沈黙と荒野を吹く風を描けるのは映画館の無音こそ。
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