コマミー

燈火(ネオン)は消えず/消えゆく燈火のコマミーのレビュー・感想・評価

3.7
【消えゆく香港の象徴と遺された人の想い】




今や、"香港の姿"はここ数年で一気に変わってしまった…。
カンフー映画が一世を風靡していた頃の香港映画界も今や縮小化し、資本はお隣の中国に完全に委託される始末。

そして、香港にはもう一つ、消えようとしている産物があった。

それは香港の"ネオン"…2010年から香港の建築法が改正され、高さや大きさが制限された事により、多数の建物に張り巡らされていたネオンが続々と撤去されたようだ。当然、ネオンの需要がなくなれば、"職人"も稼ぎ口がなくなり、畳まなければならなくなる。なんて運命とは残酷なものだと痛感させられる。

そんな中誕生したこの作品…"香港のネオン街の姿を再現"しながらも、一部は実際にネオン職人の指導の元、1から作り直したり、劇中の登場人物たちのネオン管の製作もキャストに1から指導してつくったようだ。キャストも製作陣も、ネオン職人に対する"リスペクト"を芯から感じさせたものになっていた。
それに、本作は"遺された人の大切な人への想い"のようなものも感じ取れる温かいファミリー・ストーリーとしても描かれている。ネオン職人である夫:"ビル"のやり残した仕事を叶えるために奔走する"メイヒョン"のいろいろな葛藤や、ビルの"弟子"、ビルとメイヒョンの"娘"の"複雑な心境"や弟子自身に関しては、"若者の夢"をも閉ざしてしまう香港の現状をも描いており、極めて辛かった。"態度が冷たい娘"の心境も、どこかそれを感じさせて苛つきながらも辛さも感じた。

香港の名女優"シルヴィア・チャン"の悲しげも温もりも感じさせる演技が、物語に味を与えとても良かった。ビルを演じた"サイモン・ヤム"は、サスペンスやアクションの印象もあった為、本作の優しさもあり、少々謎が多い夫の演技は新感覚であった。

できれば、小さいものだけでもいいから、香港のネオンはこれからも残してもらいたいなと改めて感じさせた物語だった。これから先、香港はどうなるのか分からないが、ネオンを家族の意思と共に残したい、国民たちの情熱があれば、香港の名所がいずれまた活気を取り戻せるだろうと感じた物語だった。

そして、身近な大切な人も本作を見て、大切にしようとも感じさせた作品でした。
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