みや

燈火(ネオン)は消えず/消えゆく燈火のみやのレビュー・感想・評価

4.0
自分が香港を訪れたのは、イギリスからの返還を翌年に控えた1996年。その時の記憶から、香港には、今もネオンに彩られた風景が残っていると思いこんでいた。けれど、それから25年がたって、当然街並みも変わったことをスクリーン越しに伝えられ、時の流れを感じた。

観ている限り、ネオンの撤去は、建築法などの改正によるもので、香港の政治体制の変化とは直接関係はないようだ。だが、香港に花開いたネオン文化を、今なお後世に伝えようとしている「ネオン職人」を取り上げることで、観客に対して、香港が歩んできた(歩まされてきた)歴史を想起させる効果を意図していることは間違いない。

ただし、この映画は単なるノスタルジーに留まっていない。市井の人々が、数々の困難の中でも、たくましく生き抜いてきたこと、そしてこれからも、変わり続ける状況を受け入れながら、新たな展開を模索して生き続けていくだろうことを描く。

取り上げられた「ネオン」というモチーフが秀逸だと思う。なんとも言えない色合いが、やはり観ているだけで美しい。そして、他の照明にはない温もりを感じさせる。実際、ネオン管は、どんなに熱くなっても40度ほどらしい。「人の優しさ」を象徴するモチーフとして、これ以上にふさわしいものはないのではないか。

自分は宣伝されているように「泣ける」までは行かなかったが、香港ならではの文化やしきたりが所々に描かれていてとても興味深く観られる一本だった。
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