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奇蹟の人/ホセ・アリゴーのとらキチのレビュー・感想・評価

奇蹟の人/ホセ・アリゴー(2022年製作の映画)
3.3
みんな大好き💕“エクストリーム(旧TOCANA)”配給作品。
ブラジルに実在した心霊手術師、霊能者であるホセ・アリゴー氏の半生を描いたドラマ。
このアリゴーさん、1955年から1971年にかけて地元に診療所を構え、毎日数百人の患者たちを相手に“心霊手術”とされる医療行為を行なってきた人。この“心霊手術”というのがなかなかスゴくて、患者に手をかざして病巣、患部を探り、必要とあればいきなりそこらへんにあるナイフで身体を切開し、その中に手を突っ込んで腫瘍、病巣を摘み出してしまう!しかもその際のナイフや手指は一切の殺菌滅菌処理無しで!当然麻酔等々も無しなのだが、何故か患者はそれほど出血もせず痛みを感じずに治癒してしまうという…他にも“白内障の手術”ということで、目ん玉に棒を入れてグリグリと掻き回したり…と「さすがエクストリーム!」な、過激な描写が続くし、そもそもアリゴーさんがそんな事出来てしまう根拠が、WWⅠで死亡したドイツ人医師のアドルフ・フリッツの霊が憑依して医療行為を行わせているという、側から見たらとても香ばしい設定。そこらへんからもエクストリームらしさが漂っていたりする。
こうやってツラツラと書いていると、トンデモ系なB級作品と思われるかもしれないが、実はアリゴーさん自身の憑依先の“器”に“選ばれて”しまった苦悩、葛藤に向き合い、地元のカトリック教会や医師会との対立も描く、ちゃんとマジメに作られていた作品。作中、常に“十字架”を意識した画作りがなされていたのがとても印象的。因みに、こんなマユツバな“心霊医療”がブラジルの現地で大きく受け入れられている背景には、超自然的、超物理学的な事象を当然のごとく受け入れてしまうブラジルという国の元々の土壌があるのだという。そして“200万人の人々を癒し、治療費は一切受け取らなかった”この事実が実に重い。自らの使命、運命の終わりまで見えていたかのような発言を繰り返し、この世を去っていったアリゴーさんの人生の意味について、いろいろと考えさせられた。
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