おにぎりちゃん

共に生きる 書家金澤翔子のおにぎりちゃんのレビュー・感想・評価

共に生きる 書家金澤翔子(2023年製作の映画)
5.0
始めから感動シーンでもないのに涙が止まらなくて、ラストまで号泣しっぱなしだった(貸し切り映画館で鑑賞)。

効率や生産性を求める社会に生きていて、目が曇っている自分に、翔子さんが本当に大切なことを教えてくれた気がした。

なぜ翔子さんの書は、見た人皆の心をそれほどまで強く動かすのだろうか?と考えると、それは単に「うまい」とか「障がいがある」とかそんな単純な理由だけではないんだろうな、と思う。
悟りを開いたような純度の高い仏心で、皆に喜んでもらいたいだけの心で書に向かっている、そんな翔子さんだからこそ、優れた書が書けるのだろう。
そして、何より母である泰子さんの愛情と計り知れない努力が素晴らしい。翔子さんの作品は、翔子さん一人で作り上げたものではなく、泰子さんと共に歩んだ人生そのものなんだろう。

障がいがあっても、社会のレールに乗れなくても、誰にでも尊厳があり、そこにいるだけで成功なんだと教えてくれた。

翔子さんのような高等な精神のレベルには達せられなくても、今だけに徹して皆の心を動かせられるような書を、私も書けるようになりたい。