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イグジステンズのkuuのレビュー・感想・評価

イグジステンズ(1999年製作の映画)
3.6
『イグジステンズ』
原題eXistenZ.
製作年1999年。上映時間97分。
(eXistenZのXとZが大文字なのは、ハンガリー語で『神』を意味する "isten "を間に挟んでいるためだそうっす。)

鬼才デビッド・クローネンバーグ監督によるSFサスペンス。
脊髄に穴をあけ、そこにバイオケーブルを接続して楽しむバーチャルリアリティゲーム。
その最新ゲームをめぐり、天才ゲームデザイナーと反ゲーム主義者たちとの闘いが繰り広げられる。
クローネンバーグ独特の、奇妙かつダークなビジュアルが満載。

究極の体感ゲーム『イグジステンズ』の発表会で、女性ゲームデザイナーが狙撃された。
彼女は会場にいた男性と、その陰謀を暴こうとするが。。。

今作品は、仮想現実の世界をベースにした同じSF映画である『マトリックス』と比較される事が多々あると知り観てみた。
たしかに今作品は、『マトリックス』を超えている部分もあると思うが個人的には後者を愛してるかな。
『マトリックス』は技術的にはなんちゅうても素晴らしい。
でも、そのアイデアは、既存のSFの多くのトレンドの融合してるって云えなくはない。
バーチャルリアリティは決して新しい概念やないけど、今作品でのコンセプトの立て方は新しいと云えるかな。
あくまでも、この当時で考えたら。
有機的なゲームポッドは、背骨の付け根にあるバイオポートによって、人間の体にぴったりと差し込まれる。
こないして、生きとる人間と、生きているゲームポッドがくっつくことで、人間とテクノロジーの一体化というのは、クローネンバーグ監督のテーマがさらに強化されているかな。
人間と機械が有機的に同じものになりつつあるという概念に向かっているようでもあるし。
映画『ブレードランナー』やと、人間と機械は意識という点で一体化していると見なされてたけど、今作品やと人間と機械は肉と骨という点で一体化していると見なされてる。
武器の一つも肉と骨で作られ、人間の歯を弾丸として発射する。
理屈の上じゃ、人間と監督の描くテクノロジーが同じものになれば、完全に一体化することになる。
作中、アレグラ(ジェニファー・ジェイソン・リー)の作るゲームは、登場人物にとっては、現実にいるはずやのに、まだゲームの中にいるような錯覚に陥るほどリアルに見える。
そしてまた、彼らが実際に現実にいるのかどうか、疑問を持たざるを得ない。
ある時、テッド(ジュード・ロウ)はゲームを一時停止して、まるで現実の生活がゲームで、アレグラはただのキャラであるかのように感じる。
これは本当なんやろかと、ふと考えたら(マジに考えてみるのも一興かと)今作品は確かにその可能性を提示してる。
私たちが知っている限り、この映画の『eXistenZ.』で起こることはすべては、現実のさまざまなレベルにおいて、ゲームの一部である可能性がある。
アレグラとテッドは、『eXistenZ.』に入った後、異なるレベルの現実に入る。
彼らが『異聞録』に入る前に起こった出来事が、彼らをそこまで導くために作られた別のゲームの一部に過ぎないと云うことを、私たちはどうやって知ることができるのか。
インターネット上のリンクが終わることがないように、ゲームもまた、互いの上に果てしなく積み重なることができるし、デヴィッド・クローネンバーグは、私たちが何一つ確信を持てない世界を提示してる。
そんな今作品は、どんでん返しを含め面白かったっす。
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