ピロシキ

独裁者たちのときのピロシキのレビュー・感想・評価

独裁者たちのとき(2022年製作の映画)
3.6
かつてレーニンやヒトラーを主人公に映画を作り、ロシア政府から監視されまくってきた、アレクサンドル・ソクーロフの最新作。これを作ったのがソクーロフだと知らずに観れば「ハァ?」みたいな映画。ソクーロフだと知って観れば「ハァ…」みたいな映画。なぜなら、こんな妙な映画を作ろうと思い立つのは、ソクーロフぐらいなもんだからである。

エンタメ要素はもちろん無く、スターリンとヒトラーとムッソリーニに加えてチャーチルまでもが一堂に会して、モゴモゴと何やら口々に話し続けるのみで、明確なストーリーはない。なんならチャーチルが居るところにチャーチルがやってきて、そこにまた別のチャーチルが映り込むという謎の増殖まである。死んだ男たちを動かすのは現代のAI技術だが、最先端ではない。ゆえに、ちゃんと喋れてるようであんまちゃんと喋れておらず、これがまたなんとも言えないムードを醸し出す(どうやら予算が不十分だったらしい)。

ウロウロと動き回っては互いに罵り合う世紀の独裁者たちを尻目に、神に会うことを許された唯一の人間は、チャーチルのみ。生きているうちの愚行も蛮行も、すべて神にはお見通しということか?

これはソクーロフによる、歴史上の人物の、盛大な「私物化」の記録である。まぁいいんじゃない、所詮おとぎ話ヨ。
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