煉獄でスターリン、ヒトラー、チャーチル、ムッソリーニが天国の門を開けてほしいなあとむにゃむにゃニタニタしながら彷徨う、独裁者たちのその後。ディープフェイク無しでここまで表現できるのね。なぜだかナポレオンとチャーチルは開けてもらえたんです。立派な軍服を着たおじさんたちは、愚痴ったり牽制しあったりしながらも、煉獄の居心地が良いみたいで長居しています。それぞれ一人ずつでなく、増殖していくのもシュール。キリストは寝室で身体が痛くて動きたくないと泣き言。
話し方もまったりしているので、ちょっとうとうと。
時々、膨大な数の犠牲者が津波のように押し寄せうねりになる大音響で目覚めました。
ソクーロフの想像力は天地を超えてます。
地獄に堕ちる苦しみと、煉獄で宙ぶらりんのまま浄化できない罪が雪だるま式に永遠に増えていくペナルティだと、後者の方がキツそうです。
ソクーロフがなぜ今、独裁者を懲らしめる作品を出したかは、『DUNE』(2020年)のように、次回作、つまり煉獄で彷徨う独裁者の仲間が一人増えることの予告編ではないかしらと穿ってみました。