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独裁者たちのときのzhiyangのレビュー・感想・評価

独裁者たちのとき(2022年製作の映画)
3.0
超高級MAD? 20世紀が「映像の世紀」である賜物でもある。アイデア勝負な気もするけれど、よくやりきったな。4人とも複数人に分裂して、それぞれが自身の分身(?)を「兄弟」と呼んでいるのはちょっと面白かった。いかにも幻という感じで良い。台詞も「本物」の言葉なのだろうが、さすがに怖い。スターリンが兵士の霊?幻?に向かって「兵士よ、消え去れ。死者よ、消え去れ」みたいなことをつぶやくところとか……。

映像が全体的にぼんやりと霧がかかったようなためなのか、音が鮮烈だった。冒頭の雷鳴とか、後半の群衆のシーンとか。

このラインナップに入れられるのはさすがにチャーチルが気の毒では……と思っていたが、音声もアーカイブから持ってきているからなのか、3人(特にスターリンとヒトラー)と絡みがあるチャーチルを入れると展開しやすいという事情はありそう。あと、スターリン、ヒトラー、ムッソリーニは地獄へ(チャーチルは天国へ)という差配をほのめかすためにも必要だったのかなと。

イエスとかナポレオンも出てくるけれど、彼らも映像の元ネタがあるのだろうか。

多分使いやすい会話というのがあるのだろうが、ムッソリーニがスターリンに対してレーニンとの距離の近さでマウントとっていてちょっと面白かった(ムッソリーニは元々極左だったとは聞いたことがあるけれど、レーニンと面識あったの?) 回転木馬が出てくるけれど、なんでみんな回転木馬に言及してんの?笑

まったくどうでもよいけれど、D.A.F.の「Der Nussolini」を思い出した人もいるでしょう。「手を鳴らして、おしりを振って、ムッソリーニと踊ろう、ヒトラーと踊ろう、イエス・キリストと踊ろう、共産主義者と踊ろう」というあの曲の嘲笑感はこの映画全体にも通底しているのかもしれない。
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