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ファイブ・デビルズのayのレビュー・感想・評価

ファイブ・デビルズ(2021年製作の映画)
3.0
Filmarksオンライン試写会にて鑑賞。

自然が美しい山あいの村のプール教室のインストラクターで、アデル・エグザルコプロス演じるジョアンヌ。彼女とセネガル人の夫ジミーとのあいだの娘で、嗅覚に関する不思議な能力をもつ少女ヴィッキーのキャラクターが、本作を他とは違ったユニークな存在にしている。

どちらかというとヴィッキーに近い視点からこのミステリアスな物語がスタートするのだけれど、特異な知性を授かった8歳の彼女がどこまで自分の身の回りのことを悟っているのかがはっきりしない。情が通わず不穏でよそよそしい家族関係。何が前提にあるのかはわからないけれども、たしかにそれぞれの心を支配する人生の影。それが中盤、ジミーの妹ジュリアがあらわれて、理屈のわからないところでうごめいていた叫び出したいほどの思いが疼きだして、物語はタイムリープ・スリラーへと発展する。

筋立てはシンプル。SF的要素でみる人の好奇心を刺激しつつ、女性同士の愛の関係、疎外される男性性、レイシズムなどを扱ってる。どこかしら自由を妨げられている人たちの"現実"世界への洞察を、みる人に深めてもらうために苦心された脚本だった。最後にタイトルThe Five Devilsに立ち返って意味を考えると、また思考が広がった。

独特の美意識、色彩感覚の映像。閉鎖空間で繰り返される運命をオリジナルに大胆に実験的に表現する監督のレア・ミシウスには、完成形の粗さも含めて、映画づくりにたいする炎のような情熱と野心を感じる。
初の試写会でフレッシュな作品をみることができて、うれしかった。
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