木蘭

ファイブ・デビルズの木蘭のレビュー・感想・評価

ファイブ・デビルズ(2021年製作の映画)
3.1
 少女の特異な嗅覚がもたらすユニークなタイムループ物の装いをしているが、監督が共同脚本を務めた『パリ13区』と同じく、関係性をこじらせた男女の情愛を描いたメロドラマ。

 脚本では説明されていた事を編集段階で削る方法を取ったらしく、重要ないくつもの点はあえて描かれない上に伏線も回収されないので、SFミステリーと考えると不満に思うだろうけど、ちょっと変わったメロドラマとして観ると楽しめる。子供可愛いし。

 美しい景色とは対照的に、人間を映す時は、脂肪や筋肉、産毛や傷、加齢の皺、小人症といった肉体の生々しさを強調する描写が印象的だった。とてもエロティックではある。
 でも、そのリアルさ故に、メインの女優たちが17歳と27歳の二役を演じている不自然さも気になった・・・高校のシーンで若い子と並ぶと体が違うもの。

 あとね・・・劇中で、少女が怪しげな香りの瓶詰を作ったり、鍋で分かりやすいイメージの呪い(?)の薬を作ったり、その他もろもろの描写が少女の叔母も含めて完全に魔女のそれなのも気になった。
 最近は魔女が自立した女性のシンボルの様にとらえられる事も多いし、村社会から疎外される異端な存在としての描写なんだろうけど・・・ルーツをアフリカに持つ黒人女性たちを定型化した魔女として描くのは、一歩間違えたら酷い差別的表現になりかねないと思うのだが・・・大丈夫なの?

 迷惑な妻と妹に振り回されるし、元カノも面倒くさそうな感じの人だし・・・お父さんってば、かわいそう・・・娘が可愛くてよかったね・・・と涙を拭きながら劇場を後にした。
木蘭

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