けいと

エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版のけいとのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

優しい傑作だった
寛容さが失われた当時の台北で生きる苦しさや、言葉を交わしていても完全に理解し合えるわけではないコミュニケーションの難しさを、時には微笑ましく、時には重厚に描いていてとても刺さった。まさに現代にこそ通じる作品だと思う。元々群像劇が好きなので尚のことハマった。序盤が正直退屈に感じたけれど、そんなことが気にならなくなるくらい面白いと思う。一度では吸収しきれなかったし、言語化もうまくできないけれど、日常で感じる葛藤が映画に詰まっているように感じた。それでも悲劇になるのではなく、あくまでコメディ?として笑いを混じえながら登場人物に優しい眼差しを向けていくのがとても好きだった。恐怖分子やクーリンチェのような悲劇からなぜこのような喜劇を撮ったのかについて、キャラを通して言及していたのが面白かったし、創作における悲劇や喜劇への考えが本当に興味深かった。エドワード・ヤンはとても思慮深い人だったというのがわかるし、本当に凄いと思う。相変わらず画はえげつないし、長回しが多用されているのが印象的だった。後半はどんどん画面が暗くなって表情がほとんど見えなくなるけれど、それでも映画が成り立つことが衝撃だった。ラストは正直別れて欲しかったのでモヤモヤしたけれど、恋愛ってそういうものなのかなと感じた。これだけ長く書いてちゃんとしたことは何も言えてないけど、凄いものを見てしまったことだけは自分でもはっきりしている。映画館で観て良かった。これからも観返すと思う。
けいと

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