じゅ

エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版のじゅのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

なんか、レア物感あって行ってみたかった。


1994年の台湾は台北。わりと互いに近くの恋人同士とか夫婦を跨いで巻き起こるすれ違いとか浮気とか、親友同士の関係の亀裂とかとか、そんな話。なのかな。


これ2日半の物語なのか。怒涛の2日半だな。

台湾の歴史の関係してそうな雰囲気のとこググってみた。(世界史の窓のページ見た。)
1951~1965年まで米国の経済支援でインフラ整備を進めて、
1970年代は政府主導で高度産業化を進めて国内需要を増進して、
1980年代にはIT産業も成長してきてNEIs(新興工業経済地域)の1つになる。
そうして経済成長が進んでくうちに民主化の要求が強まってきて、蒋介石・蒋経国総統が1949年から敷いていた戒厳令による政治的事由の抑圧への反発運動が活発化する。その後1987年に戒厳令が解除される。
1988年には本省人の李登輝が総統になって民主化を進めていく。

冒頭で演出家のバーディが民主化うんぬん言ってたのはまあそういう背景か。世界史とかちゃんと勉強してりゃわざわざ後々ググらずともその場で理解できただろうな。
この20年で世界で最も裕福な場所になった、みたいなことも導入のとこで語られてたし、政治的にも経済的にも激動の時代だったんだろうな。ともすれば、誰と誰が別れたとか婚約破棄したとか絶交したとか解雇したとか辞めたとか、そんないろんなものが形を留めず変わってく怒涛の数日間の展開もまあ時代だなあって思える。

にしてもバーディさん、大同だっつってみんな同じになればどうのこうのって語ってた様は、民主主義が初めから用意されてた国に生まれた人間から見たらやべえ奴にしか映らなかったっす。
大衆演劇のチケットを買うことは投票と同じだみたいな話はなるほどって思った。


なんか、「情」というのも重要なんだろうなと思った。芸術家とか役者が感情の仕事だって強調されてたのも関係してそう。
情で仕事が決まるとか、この時代の仕事で情に訴えようとするなんてやばいとか、各々正反対のこと言ってたりもしてたけど、前者では仕事と言いながらもけっこう深い仲を前提としてて後者はまじでドライな業務上の関係を前提としてた感はある。要は、情は情でも個人的なものと仕事上のものに別れるというか。

そう思うと、業務としての上辺の情を切ってしまって、個人としての心から持てる情を求めた人たちの群像劇だったような気もしてる。
であればまあ、政略結婚みたいなかんじで婚約してたモーリーとアキンが婚約解消したのも、モーリーの姉さんと義兄さんがTV番組の体裁のため仲良し夫婦を演じてたけど結局離婚したのもそうだなってかんじ。ミンとチチが別れるってことでミンがエレベーターから彼女の背中をを見送った後、やっぱり後を追おうと扉を開いたらチチも戻ってきてたの良かった。あとゴリクソ自分勝手なモーリーと"いい子ちゃん"チチが実は心からの関係で、古くからの仲だったアキンとラリーが関係を絶ったのはめちゃめちゃ面白い。各々みんな、たぶん時には自分も知らぬ間に、あいつとかこいつとかに向く自分の気持ちを自問しまくったのかな。


あとたぶんアキンとバーディが意気投合したところでたぶん何らおもろいもんは生まれない気がしますw
じゅ

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