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エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版のらのレビュー・感想・評価

4.2
群像劇としての複雑さはあるものの、ロメールやウディ・アレンを彷彿とさせる軽やかなラブコメディの趣も感じられてめちゃくちゃ面白かった。特に後半は超笑えます。『牯嶺街少年殺人事件』の直後に公開された作品であるというのは驚きだが、映像に時代のアイロニーと重みが宿っているところはやっぱりエドワード・ヤンの映画である。

照明を生かしたアーティスティックなショットの数々は奇跡的なほど美しい。ヤンの映し出す光と闇は本当に豊かだ。光の中に虚無と寂しさ、闇の中に希望が見え隠れするような単純でない豊かさがある。小説家のストイックな部屋の、演出家の煌びやかな舞台装置の、夜更けのプールサイドの、夜明け前の薄暗いオフィスのーー光と闇。明暗の使い分けと構図が印象的なシーンは山ほどある。個人的には、エドワード・ヤンのフィルモグラフィの中でも屈指の作品であると思う。
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