ねんお

エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版のねんおのレビュー・感想・評価

4.6
 恋愛時代というタイトルが付いてはいるが、この作品は恋愛というくくりに収まる作品ではない。当然、恋愛が大きなテーマであることに異存はないが、それ以上に「獨立」が主要なテーマであることには留意しておきたい。恋愛か、独立かではなく、恋愛があるからそこからの独立があり、独立があるからこそその恋愛の終わりは爽快に、痛快に、ほろ苦く、時として甘美な味わいを持つ。
 生まれついた社会的地位によって自身の人生に割り振られた社会的役割と、そこから生じる人間関係に束縛される人物たちが、それぞれの交流と、交流が呼ぶ交流を通じて、人生に折り合いをつけながら独立していく様に、私はエドワードヤンの人間愛を見出す。彼らは独立する代償としてこれまで自身が、自身を培ってきた多くのものを失うことになるわけだが、不思議なことに全員が爽やかな顔をしている。まるで憑き物が落ちたかのように。
 世界を美しく切り取る絵画の如きショット群の中に挿しこまれる台湾と中国の対立、そして登場人物も言及する「一国二制度」という用語は、エドワードヤンが当時の世相と雰囲気を映画によって時間の腐敗から守ったアクチュアルな作家であることを証明すると同時に、「独立」というテーマをことさらに強調することにもなる。
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