似太郎

イタリア旅行の似太郎のレビュー・感想・評価

イタリア旅行(1953年製作の映画)
4.8
【不協和音】

ロベルト・ロッセリーニ監督の敢えて「何も描かない」独自の映画話法が全編に於いて炸裂した、倦怠期の夫婦の不安心理を抉ったロード・ムービー。 

主演のイングリッド・バーグマンが『カサブランカ』や『ガス燈』とは全くアプローチの異なるやさぐれた妻を好演。彼女を支える夫役のジョージ・サンダースも違和感なく映画の不毛な世界観に溶け込んでおりgoodであった。

映画とは、事物が事物であると明確化することによってのみ成立する。ロッセリーニならではの【弁証法的な仕方】がこの映画で遂にピーキーへと達した偉業。まるで物語を語ることを放棄したかのようなラストが映画全体の【不協和音】に拍車を掛ける、そんな秀逸な出来栄え。

ほぼ移動と対話形式で紡がれる夫婦の「愛の復活」を描いた極端にキリスト教的テーマを含んだ作品かも知れない。
似太郎

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