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アイアム・ア・コメディアンのKUBOのレビュー・感想・評価

4.2
今日の試写会は『アイ・アム・ア・コメディアン』マスコミ試写。『東京クルド』の日向史有監督の最新作だ。

最近お笑い番組とか見てなかったから、実を言うと、このウーマンラッシュアワーの村本のことは「なんとなく政治的なことを言って表舞台から抹殺された芸人」くらいにしか知らなかったので、本作で彼のことに触れられて本当によかった。

漫才のネタの中で「安倍政権」や「原発問題」、「在日朝鮮人問題」などに舌鋒鋭く切り込んでいく。

「ネトウヨは桜の会の名簿を廃棄しても何も文句を言わないのに、俺が炎上したツイッターを削除すると一斉に文句を言う。要するに、公的な文書より俺のツイッターの方が重要なわけだ!」

村本のこういったネタに「お笑いに政治を持ち込むとか、気持ち悪い」なんて呟きもあったけど、今アメリカではイスラエルのガザ虐殺に反対して大規模な学生デモが起きている。日本ではどうだろう? きっと今の日本の学生たちは何かあってもこんなデモはしないんだろうなぁ。意見を言うことをカッコ悪いと思ってる。

それに、あのネタを「フジ」でやる段階で終わってる。フジと読売は御用マスコミだからね。

一時期一世を風靡したウーマンラッシュアワーは、村本が政治的なネタを始めるようになってテレビから抹殺された。

本作では、その後の村本が描かれ、そこに彼の求めるところが見えて素晴らしい。

沖縄へ行く、福島へ行く、在日朝鮮人を語るなら韓国にも行って現地の若者たちとも意見を交わす。アメリカにも行って中卒の村本が英語の勉強までしてスタンダップコメディに挑戦する!

「日本のことは嫌い?」「謝ってほしいの?」「俺はこう思うんだ…」

率直だ。くだらない大人になっていない。40歳にして、なんてピュアな若者なんだ!

人は大人になればなるほど政治や権力者の不正や既得権益に対して「どうせ〜だから仕方ない」とか訳知り顔で言うようになるけど、感じた疑問ひとつひとつを素直に言葉にしていく村本の姿は清々しくもあり、日本の現状に行き詰まりを感じている我々の世代にも勇気をくれる。

「俺は政治家にはならないよ。俺はコメディアンだ。お笑いは最高のエンターテイメントだ。だから俺はお笑いを通して若者たちの意識を変えていくんだ。お笑いにはそれができる!」

心から応援したい。考えることをやめた日本の若者の中に、村本のような男がいることが心からうれしい。いろんな軋轢があるんだろうけど、負けるな、村本。彼のスタンダップコメディが、ライブを聞きに来てくれた若者たちの心の中に、きっと意識の芽を育ててくれることを祈って。

私たち大人も、負けていられないな!
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