【色、戦争、色彩の無い未来】
沖縄・長崎と移り住んだ写真家・東松照明のモノクロの作品集をベースに物語は展開するが......、言わんとしていることは非常によく分かる気がすると同時に、少し盛り込み過ぎて冗長になってしまった感じは拭えないを思う。
東松照明のモノクロの写真は、僕たち写真を見る一人ひとりに、写真を凝視して、更に自分なりの色彩を重ねてみて、本当にそこにあるものを想像させ、記憶に焼き付けようとしているのではないのか。そんなふうに思う。
友部は、日本人の多くをひとまとめにしたメタファーのような存在だ。
理想主義とリアリズムが同居し、その時々で都合よくどちらかが頭をもたげるのだ。
理想主義的現実主義者とは異なり、何をしたいのか問題提起だけで具体性に欠ける存在。
核兵器は良くない。でも、廃絶条約は批准しない。
沖縄の過度な基地負担や世界一危険な普天間飛行場は良くない。でも、辺野古はやむを得ないだろう。
被爆者の声は重要だ。でも、そこから何かが始まるわけではなくて、それだけで終わり。
戦争は良くない。でも、具体的な方策がないだけではなく、軍備拡張を容認せざるを得ない。
僕たちの周りにはこんなことがたくさんある。
ただ、声を上げることや、そんな人が存在していることは重要で、僕はそれなりに前進していると信じたい。
ロシアのウクライナ侵攻、中国の脅迫的な行動、一部の宗教原理主義国家のテロを煽る行動。
今、世界中は何か違和感のようなものを感じている。
ハマスのテロは憎むべきだ。しかし、ハマスのいるガザ地区に対するイスラエルの報復は過剰になってはいないのか。
人権とは、先進民主主義国だけのものじゃないだろう。
温暖化による激甚災害は避けなくてはならない。でも、しばらく石炭火力は使いたい。
僕たちの思い描く平和で豊かな世界は、色彩のない不十分で空虚な理想の世界なのだろうか。
「戦争はよくない」
でも実は、その背景にある問題を解決しない限り紛争はなくなりはしないのだ。
そこを見つめないから、この言葉は時に空虚なのだ。
繰り返しになるが、東松照明のモノクロの写真は、写真を見る一人ひとりに、写真を凝視して、更に自分なりの色彩を重ねて、本当にそこにあるものを想像させ、記憶に焼き付けさせようとしているのではないのか。
搾取、差別、貧困。
僕たちはどこから解決していくべきなのだろうか。
※ 友部の二面性を強調するために、友部をバイのキャラクターに仕立てたのだと思うが、もう少し構成も物語もシンプルな方が良かったように思う。また、尚玄さんは今までのなかで一番良かった気がする。