カラン

光る女 修復版のカランのレビュー・感想・評価

光る女 修復版(1987年製作の映画)
4.0
北海道は滝上から上京して、新宿で会計を習ったら農業を一緒にやるはずの婚約者、栗子(安田成美)と連絡がつかない。その彼女を北海道から探しにやって来たのは熊のような大男、仙作(武藤敬司)。彼は新宿の裏で女と出会うたびに、「俺の嫁になってくれ」と嘆願する。栗子じゃなくてもいいのか、、、

筋骨隆々の田舎の男と新宿の裏の男(すまけい)の金と薬物で弱っていく栗子。そして田舎の男の到来に不感症だった芳乃(秋吉満ちる)は痛みを取り戻し、失くしていた歌を取り戻す。

構図は都会が失くしている素朴な力や感覚を田舎の男が不器用に回復させるという、割とそのままの田舎主義の話。新宿のゴールデン街や裏の怪しい世界に、演技経験のないプロレスラーの強力な素朴さと朴訥さを導入し、鈴木清順の大正トリロジーの異界感や鈴の音、紫がかった色彩で表現しようとしたか。脚本の田中陽造の影響ということだろうか。闇格闘技場は、フェリーニの『甘い生活』を井の頭公園の居酒屋いせやにライティングしてやったら劣化させちゃいましたみたいな?これはちょっとよくない。世間との隔絶に、魚が合うのは言うまでもないが、これもまんまかな。バスから部屋を覗かれているのもフェリーニ的か。

ロングテイクはあまり効果的でないか。芳乃がやってきた北海道は滝上で、仙作を探していて泊めてもらった幽霊屋敷で、ロングテイクのカメラはズームしながら、ゆりかごのように芳乃の身体の上を執拗に前後する。芳乃の身体はステンカラーコートのボタンが上から下まで封じ込めており、裸で座位までこなすこの映画において、秋吉満ちるが最も淫靡な魅力を纏う。この後、パンプスを港町の娘の長靴と交換してもらい、長靴でスキップする。最もチャーミングである。イントネーションがいかにも日本語的でない秋吉満ちるが、その魅力を存分に発散するのは東京ではなく、北海道であるというのはとても興味深い。逆に仙作は新宿の街ロケがフィットしているのだから。

また、バスでの炎上は非常に美しかった。

118分の修復版のDVDで視聴。全体的に画質は悪くない。ただ、パンした時に若干フォーカスが甘くなる箇所があったような気が。リマスターの問題でなく、もともと?
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